社会人生活のスタートを切る新入社員の方に贈るエール

久々の村上春樹さんの新書で600頁を越える大作である「街とその不確かな壁」を読了しました。


結論も答えもなく、読み手が著者の意図を様々に自由に想像力を持って解釈しながら、モヤモヤを残したまま読み終える、まさにそんな深い体験を久々にさせていただいた感覚があります。


こうした余韻、モヤモヤを読者の中にそっと残すのが村上春樹さんの凄さであり、読者にこの余韻、モヤモヤを味わう時間をどれだけ与えることが出来るか、こそが著者の価値とも言えるかもしれません。そして人生とはまさにモヤモヤをどれだけ抱えながら、その先にある価値を自分なりに見いだしていくか、ともいえるかもしれません。


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今年度も4月は多くの新入社員の方々と新人研修でご一緒させていただきました。それぞれに、ビジネスマナーや、GPDCAの考え方、報連相の仕方、コミュニケーションの取り方、問題解決、など多岐にわたって学びを得られたことと思います。


社会人としての一定のマナーやルールを知り、守ること、そして業務遂行のための基礎知識を得ることは、周囲の同僚や上司、顧客と良い関係性を築く上でとても大切ですが、新入社員の方々にとってそれ以上に大切なことの一つとして「解なき問い」を深く考える過程をどれだけ味わい、楽しめるかどうか、ということがあるのでは、と私は感じます。


「人を不快にしないように」「人に迷惑をかけないように」ばかりが教えられているようであれば、自分の内側に秘めた思いや、考えを深め、外に発信することに対して躊躇してしまうものです。次の日本を切り開いていく皆さん自身が、何を思い、何を考えているのかこそが日本の未来を創るのであり、皆さんの内側にあるものを言葉にし、体現して行ってくれる応援をすることこそが、私のような歳を重ねた人間が出来ることなのでは、と改めて感じます。


目先の解決策に飛びついてしまい「なぜだろう」を深く問わなかったり、解が見えないことに不安や焦りを覚えてすぐ「どうしたら~xxx?」と聞く、こういう傾向が見られると、モヤモヤを味わい考えるプロセスそのものに時間を費やす価値があるって気付いてほしいなぁ、と切に感じます。あなたは何を感じても、何を考えてもいい。あなたが何を感じ、考えるかの先に、新しいことが生まれるのですから。



解なき問いを味わい考えるとは、コスパとか流行りのタイパ(タイムパフォーマンス)とは縁遠い世界のこと。


一人ひとりの肉体が有する素晴らしい脳や心を丁寧に使いこなして考え、感じ抜いてほしい。それが人生を味わうということだから。


日本の未来を切り開いていく、新入社員の方々に思いを込めて。


 

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